−序−


今日と同じ明日。明日と同じ今日。
世界は既に変貌していた。


世界に同じ願いを持つ二人。

強くなりたい。
強くなれば。

全てを打ち倒す事が出来る。

強くなりたい。
強くなれば。

全てを破壊する事が出来る。


だから一人は鍛えた。
死を踏破し鍛えに鍛えた。その心も刀剣を振るう意志も。鋼の如く。
鍛え続けた。無心に鍛え続けた。其の道には善悪は無かった。

気がつけば。
独り。瓦礫の王国の主になっていた。
地には屍。天は血の色。
それでも月の光を浴び。己の歩いてきた道を誇りとして牙の王は歩み続けた。



だから一人は鍛えた。
生きる事を鍛えに鍛えた。如何にして死なない様に生きるかを。思考した。
鍛え続けた。無心に鍛え続けた。其の道には善悪は無かった。

暴力で知力で他者を自分を支配した。
他には優しい嘘を。自己には一握りの勇気を。武器にして。
恐怖の淵にただ戸惑い。それでも。生きていた。


其処にはみっともなくても生きる事に何も躊躇いがなかったから。
時には考え。躊躇い。悩んで。それでも太陽を目指し一歩ずつ歩いて。
如何なる時も諦めない様より鬼と呼ばれるようになった。

二人は出会う事は無かった。
だが偶然の産物で。

──出遭った。

牙狼の王と鬼の話。サマータイム。
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