−終−

リードを持ったオーバーオールの少女が犬の勢いに押されるように前のめりに歩き出す。それを慌てて追いかける青年。

後ろから頭の上で腕を組んでだらだらと歩き笑う少年とそれを楽しそうに応対するスカートの少女。
オーバーオールの少女が二人を手招きして、そして少年は少し呆れた風で。
とぼとぼと。ゆっくりと歩き出す。



何気ない夏の夕暮れの一日。

未だ蝉も鳴り止まず。

夏すらまだこの街に残ったまま。


今日と同じ明日がまた訪れようとしていても。

彼らの世界は少しずつ──変化していた。


スカートの少女が少年の腕を組むように引っつかんでひきずっていく。
そのまま抱きしめるようにオーバーオールの少女にぶつかる。

驚いた少女はリードを離して犬を解放する。

三人は折り重なるように芝生の上に。

なにやってんだか。

誰かがそう呟いた言葉に。

三人は揃ったように笑い出し。
犬はきょとんとその場に留まった。

遅れやってきた青年は笑いをこらえつつ少女の手を取った。

そしてもう一度散歩は始まった。

子供のおいかけっこの延長の彼らの日常。


だから。

そんな夏の日の思い出が出来たまでのささやかな話。



サマータイム・アフターデイズ。


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