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コンコン。
UGN黒巣市支部支部長室のドアがノックされる。

どうぞ、と室内の主──支部長代理こと天城美鈴が応じる。

入ってきたのは”ルーク”北条亮。この度の作戦に参加した一人でもある。報告書を持ってきたのだろう。

「報告書を作成したのでお持ちしました」
「ご苦労様です。お茶でも如何ですか」

幾分形式どおりにも聞こえるやり取り。
北条は少しの間考えたかのように沈黙し。

「ではお願いします」
「はい。わかりました」

笑顔で予想していたかのように美鈴は珈琲サーバーに手を伸ばした。
席を勧めカップを用意し、注ぎいれる。

向かいの席の北条に手渡す。礼をいい其れを受け取る。

私は少し疑問に思った。
いつもの北条なら。誘いを断り即時に退室をしていた筈である。


「何か聞きたい事があるのですね」
私の代わりに美鈴が聞いてくれた。

「今回の事件と四季守さんの事についてです」
返答も早かった。


「半年前の事件。四季守さんが烈火の仮面──鳥越劉斗を襲撃した事。これは間違いないですね」
「ええ。間違いないです」
「それはファルスハーツエージェントとしての活動ですか」
「違います」

シンプルに聞かれた質問とその答えの応酬。

「なら何故」
「父親の敵を討つ為です」


美鈴は一口紅茶を飲む。

「……それは鳥越さんが四季守さんの父親を殺害したって事ですよね」
「はい」
「”ビジネスとして?”」
「はい」

室内に沈黙が流れた。

「四季守さんの父親は各務に席を置いていたファルスハーツエージェントでした。ある事件にて各務を裏切り。ファルスハーツのエージェントとして活動し」


「鳥越さんに殺害されました」


「それって…鳥越さんが悪いわけじゃないですね」

美鈴は苦笑して。

「いい、悪いという正論だけでは人は動いたりしませんよ。彼女が父親を殺されたという事実は変わりませんからね」